【シミュレーションで学ぶ】もしもの時、子育て家庭はどう動く?発災直後の行動計画
【シミュレーションで学ぶ】もしもの時、子育て家庭はどう動く?発災直後の行動計画
日々の忙しい生活の中で、地震や台風といった自然災害について考える時間はなかなか取れないかもしれません。特に小さなお子様を育てていると、ご自身のことに加え、お子様の安全も確保しなければならず、漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるかと思います。
「もし、今、大きな地震が起きたら?」 「その時、子どもと一緒にどう動けば良いのだろう?」
こうした疑問や不安は、具体的な状況を想像することで、少しずつ解消されていきます。この記事では、災害発生直後の数分間、そしてその後の行動について、子育て家庭に特化したシミュレーションの方法と考え方をご紹介します。ご家族で一緒に考えるきっかけにしていただければ幸いです。
なぜ「発災直後」のシミュレーションが大切なのか
災害が発生した直後は、状況が目まぐるしく変化し、情報も錯綜します。そんな極限状況の中で、冷静かつ素早く行動するためには、事前に「もしこうなったら、こうする」というイメージを持っておくことが非常に重要です。
特に小さなお子様は、突然の揺れや大きな音、周囲の状況の変化に強い不安を感じるものです。大人が慌ててしまうと、お子様の不安はさらに大きくなってしまいます。事前に家族で話し合い、具体的な行動をシミュレーションしておくことで、落ち着いて対応できるようになり、お子様の安心にもつながります。
また、発災直後の行動は、その後の安全確保や避難、そして家族の安否確認にも大きく影響します。限られた時間の中で、最善の行動を取るために、具体的なシミュレーションは欠かせません。
シミュレーションを始める前の準備
効果的なシミュレーションを行うためには、いくつかの準備が必要です。
- どんな災害を想定するかを決める
- 日本で最も可能性が高いのは地震ですが、お住まいの地域によっては台風による水害や土砂災害、火山噴火なども想定されます。まずは、ご家族で話し合い、最も可能性の高い、あるいは影響が大きいと思われる災害の種類を一つ、あるいは複数選んでみましょう。この記事では、特に地震発生直後の行動に焦点を当てて解説を進めます。
- 発生する「場所」と「時間」を想定する
- 災害はいつ、どこで起きるか分かりません。シミュレーションの質を高めるために、いくつかの具体的な状況を設定してみましょう。
- 自宅にいる時:
- 家族みんながリビングでくつろいでいる時
- お子様が寝ている時(夜間)
- お父さん(お母さん)が外出中で、一人でお子様を見ている時
- 別々の部屋にいる時(寝室、子ども部屋、キッチンなど)
- 外出時にバラバラになっている時:
- お子様が学校や保育園・幼稚園にいる時
- お父さん(お母さん)が職場にいる時
- 買い物のために別行動している時
- 自宅にいる時:
- これらの状況を設定することで、より現実に即したシミュレーションが可能になります。
- 災害はいつ、どこで起きるか分かりません。シミュレーションの質を高めるために、いくつかの具体的な状況を設定してみましょう。
- 家族の状況を確認する
- お子様の年齢や特性(アレルギー、持病など)を考慮に入れます。
- 同居の高齢者や、特別な支援が必要な家族がいるかどうかも確認します。
- ペットがいる場合は、ペットの安全確保や避難についても考慮が必要です。
シミュレーション例:自宅で大きな地震が発生したら
ここでは、最も想定しやすい「自宅にいる時に大きな地震が発生した」という状況をシミュレーションしてみましょう。
ステップ1:地震発生!その瞬間の行動
突然、大きな揺れが始まりました。あなたはお子様と一緒にリビングにいます。
- 最優先は「身の安全確保」です。
- まずはご自身とお子様の頭を守りましょう。丈夫な机の下に隠れるのが基本です。お子様を抱き寄せ、一緒に机の下へ。
- 近くに机がない場合は、座布団やクッションなどで頭を覆い、壁際や柱の近くなど、比較的安全な場所に身を寄せます。ガラス窓からは離れてください。
- 「揺れが収まるまで動かないでね」「頭を守るよ、ここに入ろうね」など、落ち着いた声でお子様に指示を出しましょう。
- 慌てて外に飛び出さないでください。
- 揺れている最中に外に出ると、落下物や倒壊した塀などに巻き込まれる危険があります。揺れが収まるまで、屋内で安全な場所にとどまることが原則です。
ステップ2:揺れが収まったら次にすること
長い揺れが収まりました。恐怖で心臓がドキドキしているかもしれませんが、落ち着いて次の行動に移ります。
- 火の元の確認をしましょう。(無理は禁物)
- ガスコンロやストーブなど、火を使っていた場合は、慌てずに火を消します。ただし、無理に近づくと危険な場合は、安全な場所から状況を確認してください。最近のガス機器には感震自動停止機能が付いているものも多いです。
- 扉を開けて避難経路を確保します。
- 大きな揺れで建物の扉や窓枠が歪み、開かなくなることがあります。避難経路を確保するために、可能であれば、揺れが収まった直後に玄関や部屋の扉を一つ開けておきましょう。
- 家族の安否確認を行います。
- 「みんな大丈夫?」と声を出して確認します。お子様の怪我はないか、落ち着いているかを確認し、抱きしめたり、優しく声をかけたりして安心させてあげましょう。
- 家族が別の部屋にいた場合は、声をかけながら様子を見に行きます。安全が確認できるまで、慌てて駆け寄るのではなく、周囲の状況に注意しながら移動してください。
- 非常用持ち出し袋を準備します。
- 事前に置いてある場所へ取りに行きます。すぐに持ち出せるように、玄関や寝室など、家族が共通して認識している場所に置いておくことが大切です。
- 自宅の被害状況を確認します。
- 建物が大きく傾いていないか、壁に大きな亀裂が入っていないか、ガラスが割れていないか、家具が倒れていないかなどをざっと確認します。余震の可能性もあるため、倒れそうな家具や割れたガラスには近づかないように注意してください。
ステップ3:今後の行動を判断する
自宅の状況や周囲の状況を確認し、今後の行動を判断します。
- 避難するか、在宅避難にするか
- 自宅が安全な状態であれば、ライフライン(電気、ガス、水道)の状況を確認し、備蓄品があれば在宅避難を検討します。
- 自宅に大きな被害がある、火災が近い、地域の避難指示が出ている、津波の危険があるといった場合は、迷わず避難を開始します。事前に家族で話し合い、「どんな状況になったら避難する」という基準を決めておくと判断しやすくなります。
- 避難する場合の行動
- 服装は動きやすく、肌の露出が少ないものが良いでしょう。お子様も同様に準備します。可能であれば、靴下を履き、底のしっかりした靴を履きます。
- 非常用持ち出し袋を持ちます。
- 事前確認しておいた安全な避難経路を通って、指定された避難所へ向かいます。細い路地やブロック塀、川沿いなどは危険な場合があります。
- 小さなお子様連れの場合は、抱っこ紐やベビーカー(状況によっては危険な場合も)を活用することも考えられますが、荷物が多くなるため、持ち運びの負担も考慮が必要です。何よりお子様の手をしっかり握り、離れないように注意してください。
- 在宅避難する場合の行動
- 安全な場所(倒壊・落下物の危険がない部屋など)を確保し、そこを生活空間とします。
- ライフラインが止まっている可能性を考え、水、食料、簡易トイレなどの備蓄品を確認し、計画的に使用します。
- 外部からの情報収集(ラジオ、テレビ、スマートフォンなど)に努め、正確な情報を得ることが重要です。
- お子様は不安を感じやすいため、できるだけ安心できる環境を作り、寄り添ってあげてください。安全な遊び(絵本を読む、塗り絵など)を取り入れることも有効です。
家族でシミュレーションを実践するヒント
頭の中で考えるだけでなく、実際に家族でシミュレーションしてみることが大切です。
- 遊び感覚で取り入れる
- 「地震ごっこだよ」など、お子様が怖がりすぎないように、遊びの要素を取り入れてみましょう。「揺れたらここに入る練習をしようね」と、机の下に隠れる練習をしたり、非常用持ち出し袋の中身を一緒に確認したりするのも良い方法です。
- 特定の場所や状況を設定する
- 「もし、おもちゃで遊んでいる時に揺れたら?」「お風呂に入っている時に揺れたら?」など、具体的な場面を設定して、「この時はどうする?」と話し合ってみましょう。
- 役割分担を決めておく
- 可能であれば、お子様にも簡単な役割(例えば、笛を吹く練習をする、防災ずきんをかぶる練習をするなど)を与えると、主体的に取り組むことができます。
- 定期的に見直す
- 一度やったら終わりではなく、お子様の成長や家族の状況の変化に合わせて、定期的にシミュレーションの内容や行動計画を見直しましょう。年に一度、防災の日などに合わせて行うのも良いでしょう。
シミュレーションからわが家の行動計画へ
シミュレーションを通じて、「この状況だと、〇〇が難しいかもしれない」「〇〇が足りないな」といった課題が見えてくることがあります。それが、わが家の具体的な防災行動計画策定のヒントになります。
- 見つかった課題をリストアップする
- 「揺れている最中、子どもを安全な場所に連れていくのが難しい」「非常用持ち出し袋がすぐに取り出せない場所にある」「家族バラバラの時にどう連絡を取るか決めていない」など、シミュレーションで気づいた点を書き出してみましょう。
- 具体的な行動リストを作成する
- 課題を解決するために、「揺れたらまず〇〇する」「非常用持ち出し袋を△△に移動する」「家族バラバラの時は□□というアプリで安否確認をする」など、具体的な行動リストに落とし込みます。
- 家族で共有しやすい形にする
- 作成した行動リストや、災害時の連絡方法、集合場所などを、家族みんなが見やすい場所に掲示したり、スマートフォンの共有メモに入力したりするなど、すぐに確認できる形で共有しておきましょう。家族防災マップを作成するのも有効です。
まとめ
災害発生直後の行動は、家族の安全を左右する非常に重要なものです。特に子育て家庭にとっては、お子様の安全確保と精神的なケアも同時に行う必要があり、事前の準備が大きな助けとなります。
今回ご紹介したシミュレーションは、特別な道具や知識がなくても、すぐに家庭で始められる取り組みです。完璧を目指す必要はありません。まずはご家族で「もしも」について話し合い、少しずつ具体的な行動をイメージしてみることから始めてみてください。
定期的なシミュレーションと見直しを続けることで、いざという時にも落ち着いて行動できるようになり、ご家族皆様の安心につながるはずです。この記事が、わが家の防災計画をさらに一歩進めるための一助となれば幸いです。