わたしたちの防災計画室

【実践】災害時の子どもの不安を和らげる 親ができる具体的なサポート

Tags: 子育て, 防災, 災害, 心のケア, 子どものケア

もしも、大きな災害が起きたら。家族の安全を確保することと同じくらい、大切にしたいのがお子さまの心のケアです。普段は元気いっぱいのお子さまでも、慣れない状況や怖い出来事に遭遇すると、心に大きな負担がかかることがあります。

日々の忙しさに追われる中で、「子どもの様子がいつもと違う気がするけれど、どう声をかけてあげればいいのか」「どんなサポートが必要なのか」と悩んでしまう方もいらっしゃるかもしれません。

この記事では、子育て中の皆さまが、もしもの時に慌てずにお子さまの心に寄り添えるよう、具体的なケアの方法や接し方についてご紹介します。専門的な知識がなくても、ご家庭で実践できるステップを中心にまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

災害が子どもに与える影響と「不安なサイン」

災害は、私たち大人だけでなく、子どもたちの心にもさまざまな影響を与えます。大きな音、揺れ、見慣れない光景、避難所での集団生活、親と離れる不安など、子どもを取り巻く環境の変化は、ストレスの原因となる可能性があります。

子どもの反応は一人ひとり異なり、年齢によっても表れ方が変わってきます。すぐに変化が見られる子もいれば、しばらく経ってから普段と違う様子を見せる子もいます。

お子さまが災害による不安やストレスを抱えているかもしれない場合に、見られることのあるサインをいくつかご紹介します。これらのサインに気づくことが、サポートの第一歩となります。

これらのサインは、お子さまが心のバランスを取り戻そうとしている過程で一時的に現れることもあります。焦らず、お子さまのペースに合わせて見守ることが大切です。

親ができる 子どもの心のケア 具体的な7つのステップ

では、お子さまの不安に気づいたとき、または災害発生後すぐに、親としてどのようなサポートができるでしょうか。ここでは、ご家庭で実践できる具体的なステップをご紹介します。

ステップ1: まずは親自身が落ち着くこと

お子さまは、親の様子をよく見ています。親が不安そうにしていると、子どもはさらに強い不安を感じやすくなります。まずは深呼吸をする、信頼できる人に話を聞いてもらうなど、ご自身が少しでも落ち着けるように努めることが大切です。親が冷静でいることが、お子さまにとって何よりの安心材料となります。

ステップ2: 子どもの話に「耳を傾ける」

お子さまが災害について何か話そうとしたり、怖い気持ちを表現したりしたときは、まずは「うんうん」と相槌を打ちながら、最後までじっくりと話を聞いてあげてください。話をさえぎったり、否定したりせず、ただそばにいて耳を傾けるだけでも、子どもは「話を聞いてくれた」という安心感を得られます。具体的な聞き方としては、「どんな気持ちだった?」「何が一番怖かった?」など、お子さまが言葉にしやすいように優しく尋ねてみましょう。

ステップ3: 否定せず、「気持ちを認める」

子どもが「怖かった」「不安だ」と口にしたり、泣いたり震えたりして気持ちを表現したりしたとき、「もう大丈夫だよ」「泣かないの」と安易に否定したり、気持ちを抑えつけたりしないでください。「怖かったね、大丈夫だよ」「つらかったね」と、まずはお子さまが感じている感情を受け止め、共感する言葉をかけてあげましょう。気持ちを認めてもらうことで、子どもは「この気持ちを感じてもいいんだ」「一人じゃないんだ」と感じ、安心することができます。具体的な言葉かけの例としては、「すごく怖かったんだね」「大変だったね、よく頑張ったね」などがあります。

ステップ4: 「安心できる環境」を作る

災害時は、いつもと違う場所や状況にいることが、子どもの不安を増幅させます。できる限り、お子さまが「安心できる」と感じる環境を整えてあげてください。 * 物理的な安心: * 抱きしめる、手を繋ぐなど、たくさんスキンシップをとる。 * そばにいる時間を増やす。 * 可能であれば、毛布やお気に入りのおもちゃなど、安心できるアイテムを持たせてあげる。 * 暗い場所を怖がる場合は、小さなライトをつけてあげる。 * 精神的な安心: * 「ママ(パパ)はここにいるよ」「一人にしないからね」と繰り返し伝える。 * 急な大きな音や見慣れないものから守ってあげる。

ステップ5: 「普段の生活」を取り戻す工夫

普段通りの生活リズムや習慣は、子どもに安心感を与えます。可能な範囲で構いませんので、少しずつ普段の生活を取り戻す工夫をしましょう。 * 食事: できるだけ決まった時間に食事をとるようにする。温かい食事は心も落ち着かせます。 * 睡眠: 寝る時間を決め、絵本を読んだり子守歌を歌ったり、寝る前のルーティンを取り入れる。 * 遊び: 子どもが好きな遊びの時間を確保する。遊びは子どもがストレスを発散したり、気持ちを整理したりするための大切な時間です。災害に関する遊びを始めた場合は、無理に止めさせず、見守りながら「大丈夫だよ」と安心できる言葉を添えてあげましょう。

ステップ6: 「適切な情報」を伝える

子どもは、大人たちの不安な会話や断片的な情報から、かえって大きな不安を感じることがあります。必要な情報を、子どもの年齢や理解度に合わせて、正直かつ分かりやすく伝えましょう。 * 小さな子ども: 「地震さんが来たけど、もう大丈夫だよ」「お家は壊れちゃったけど、パパとママは一緒だよ」など、シンプルで安心させる言葉を選ぶ。難しい情報は伝えない。 * 小学生: なぜ災害が起きたのか、これからどうなるのか(避難所のこと、家のことなど)を、事実に基づきながらも、将来への希望が持てるような伝え方をする。「避難所でみんなで助け合っているよ」「少しずつ元の生活に戻れるように頑張ろうね」など。 * テレビやインターネットからの情報は、子どもに見せすぎないように注意しましょう。過度に不安を煽る映像や情報は避けることが大切です。

ステップ7: 一緒に「できること」に取り組む

災害によって無力感を感じているお子さまもいるかもしれません。「これならできるよ」という小さな役割を与えたり、一緒に何か作業をしたりすることで、自信を取り戻し、前向きな気持ちにつながることがあります。 * 避難所でのお手伝い(簡単なゴミ拾いなど、安全な範囲で) * 物資の整理を手伝ってもらう * 絵を描いたり、歌を歌ったり、気分転換になる活動を一緒にする * 将来の防災について、子どもができることを一緒に考える(例: 持ち出し袋に何を入れたいか相談する)

専門機関への相談も選択肢に

上記のような対応をしても、お子さまの不安な状態が長く続いたり、日々の生活に大きな支障が出たりする場合は、一人で抱え込まず、専門機関に相談することも考えてみましょう。自治体の相談窓口や精神科医、臨床心理士などが、お子さまやご家族のサポートをしてくれます。

まとめ

災害は、予測できない形で私たちの日常を奪い、心に大きな影響を与えます。特に子どもたちは、その変化に敏感に反応します。

もしもの時、お子さまの不安に寄り添うために大切なのは、まず親自身が落ち着く努力をし、そしてお子さまのサインを見逃さず、気持ちを受け止めてあげることです。今回ご紹介した7つのステップは、どれも特別な道具や場所を必要としない、ご家庭で実践できることばかりです。

完璧を目指す必要はありません。日々の忙しさの中で、できることから少しずつ取り組んでみてください。お子さまが安心して、また笑顔で毎日を過ごせるようになるために、焦らず、根気強く寄り添っていくことが何よりも大切です。

「わたしたちの防災計画室」では、災害時に役立つ具体的な情報や、家族で取り組める防災のヒントを今後もご紹介していきます。ぜひ、ご家庭の防災計画にご活用ください。